言葉をつま弾く
中学の頃フォークブームというものがあった。例えば吉田拓郎さんの『イメージの詩』のように、自分で言いたいことを曲をつけて語る、という新しいスタイルが登場したのだ。
そういうブームに触発されて、曲はともかく、言いたいことを書くだけなら何とかなるだろうと、ぼくは言葉の挑戦を始めた。それがようやく形になり始めたのが、高校一年の夏頃だった。
言葉が書けるようになると、今度は欲が出てきて曲に挑戦したくなった。そのためにはギターが必要だと思い、その年の秋、親戚に頼んで古いギターをもらった。
楽器といえば、ハーモニカやリコーダーくらいしかやったことがなく、ギターは初めてだった。ぼくはさっそく教則本を買ってきた。それでコードやストロークなどの基本を学び、当時流行っていたフォークソングのギター伴奏を耳コピするなどして、必死に練習した。その甲斐あって、高校二年の夏には、そこそこの演奏が出来るようになった。
ギターを練習する合間に曲作りもやっていたのだが、こちらはなかなか進歩が見られなかった。ようやく「これは!」という曲が出来たのが、高校二年の春休みだった。曲が出来たというより、曲が落ちてきたと言った方が正しいだろう。そんな体験をしたことがなかったので、その時すごく興奮したのを覚えている。
譜面の書けないぼくは、その曲を忘れないように、さっそくラジカセに録音したのだった。
ここからぼくの、言葉をつま弾く旅が始まった。