夢のいたずら

若い頃に描いた夢が、このブログに連れてきてくれました。人生まだまだこれからです。詩とエッセイを中心に書いています。

続トイレのお話

 高校を卒業してから、ぼくはしばらく予備校に通っていたのだが、そこのトイレも色別画表記で男女の区別をしていただけで、文字での表記はされてなかった。しかもそのパネルがやけに小さかった。
 ぼくたちのような常駐派は慣れていたのでそれでもよかったのだが、外部からきた人間にはわかりづらいものだったに違いない。


 一度こんなことがあった。模試を受けに来ていた外部の女子が、ノコノコと男子トイレに入ってきたのだ。
 普通、そこに男子しかいなければ、「間違えた」と思って外に出るだろうが、その女子は違った。中にはぼくを含めてけっこう男子がいたのに、意に介したふうもなく、トコトコと男子の間を通り抜けて、サッサと個室に入っていったのだった。


 これがもし逆のパターンだったら、女子たちは「ここ女子トイレですよ」と怒り口調で言ったり、「キャーキャー」と騒ぎ出したりするのだろう。
 しかし男子の場合は、「ここ男子トイレですよ」という言葉を発する勇気がないのか、それともそういう場所で女子に声をかけたりすると「変態と思われるかもしれん」という意識が働くのか、そのへんはよくわからないが、とっさの時に女子のような毅然とした態度が取れないものだ。
 ということで、彼女が個室に入ったとたん、そこにいた男子は全員、慌てて外に出たのだった。

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