夢のいたずら

若い頃に描いた夢が、このブログに連れてきてくれました。人生まだまだこれからです。詩とエッセイを中心に書いています。

本当にあったモンペ婆さん

中学生の頃だったな。

居間で昼寝をしていた時に

玄関の扉をトントンと叩く音がした。

誰だろうと思いながら

目を覚ましてみると、そこに

ぼくの顔を覗き込んでいる人がいた。

胸に大きな名札をつけ

モンペをはいた婆さんだった。

誰だか思い出せない。

というか、知らない人だ。

ということは『夢だ』と

単純でのんびりした性格だった

当時のぼくは思い、また目を閉じた。


しかしおかしい。玄関のトントンは

ずっと続いているのだ。

『やはり夢じゃないのか』と

再び目を開けてみると、まだそこに

先ほどのモンペ婆さんが立っている。

起き上がって「誰だ!?」

と言おうとした。ところが

体が動かない、声が出ない。

その状況にイラついたぼくは

そのモンペ婆さんを振り払おうと

力任せに手を振った。その瞬間

場が変わったように感じた。と同時に

モンペ婆さんはいなくなっていた。


玄関のトントンは現実だった。

友だちが遊びに来たのだ。

おそらくトントンの音に焦ったぼくが

異次元の扉を開いたのだろう。

で、モンペ婆さんは誰だったのか?

当時住んでいた所は埋立地で

家の裏には防空壕の跡があった。

モンペ婆さんは間違いなく

戦時中の格好をしていた。

ということは、その頃に空襲か何かで

亡くなった人だったのではないか。


十数年後にその場所を訪れてみると

家はすでに取り壊されており、跡地は

駐車場になっていた。その時そこに

一人のじいさんがやってきて

おもむろに塩を撒き始めた。ぼくが

「何をやっているのですか?」と尋ねると

「あんたには見えんのですか?」と言った。

そのじいさん、一ヶ月後に死んだらしい。

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