新学期(後編)
3,
高校生になると、再びクラス替えが関心事になってくる。
クラス替えに直接関係あるのが、2年と3年の時だ。
2年の新学期の頃は、1年の頃に同じクラスや同じ部活の人間以外はあまり知らない。そこで、クラス替えに新しい出会いを求めたのだ。このへんが、小中学校時代のクラス替えとはちょっと違うところだった。
しかし、クラス替えに興味を示したのは、この2年の時だけだった。
3年になると、クラスの連帯感よりも、より個人的な人間関係というものを大切にするようになっていたのだ。そのため、ぼくにとってはクラスというもの自体が意味を成さなくなっていた。それだけ付き合いが広くなっていたのである。
4,
社会に出てから、この傾向はさらに強くなる。
ぼくは、会社の人間との付き合いよりも、会社の外の付き合いのほうを大切にした。だから社内の人間よりは、社外の人間と飲んだ回数のほうがはるかに多い。
とくに取引先と仕事を離れて飲むことが多かった。彼らはいろんな所から来ていたので、そういう地方の情報を聞くのが好きだったのだ。
また、異業種の人と飲むことも多かった。音楽関係の人の家に遊びに行ったり、ホストの忘年会に参加したり、NHKのアナウンサーと飲んだり、学校の先生と語ったり、と大忙しであった。
こういうことも、元はといえば、高校の頃から始まったのである。
5,
さて、いくつになっても、新学期は新学期である。社会に出てからも、人は同じことをやっている。クラス替えは人事異動という名に変わっただけである。
ちなみに、人事異動の時によく使われる言葉に「適材適所」があるが、それにだまされてはいけない。あれは上司の逃げの方便だ。