♪街の灯
街の灯
ほんのひとときの黄昏が
今日のため息をつく
病み疲れたカラスたちが
今日も帰って行く
昔描いた空は消えはてて
さて、帰る家はあったんだろうか
琥珀色の時の中で
街の灯は浮かぶ
明るい日差しの中でも
笑わないカラスが
すすけた街の灯を
見つめては笑う
昔描いた空は消えはてて
さて、淋しくはないんだろうか
堪えきれない切なさに
街の灯は浮かぶ
かつて北九州の小倉駅前に『黄昏』という喫茶店があった。ぼくは東京に出る前、小倉でアルバイトをしていたのだが、その帰りにバイト仲間とよくその喫茶店に行っていた。午後5時に終わる仕事だったので、『黄昏』に着く頃は、本当に黄昏れ時で琥珀色の空が街を覆っていた。
その翌年、ぼくは東京にいた。上京した当初は、新宿とか池袋に行ってブラブラしていたのだが、だんだんその人ごみにも飽きてきた。そんなある日、ぼくは新宿から中央線に乗りかえて中野に行ってみた。着いたのは夕方だった。駅前は琥珀色に染まり、その雰囲気がなぜか小倉駅前に似ていた。それ以来、望郷の念に駆られると、ぼくは中野に行くようになった。