同窓会の思い出
ずいぶん前の話だが、高校の同窓会に参加した時に、担任の先生が登場したことがある。頑固な先生だったが、そんな先生ほど生徒の心に残っているのだろう、割れんばかりの拍手をもらっていた。
その担任とは色々ないきさつがあり、ぼくは無視を決め込んでいたのだが、友人が何度も、
「先生がお前に会いたがっとるぞ」と誘いに来る。それを聞いてぼくは、
「会いたがっとるわけないやないか。それに何十年経ったと思っとるんか。先生が憶えとるわけないやろ。行っても無駄」と言って断る。
「先生がお前を忘れるわけがないやろ。お前が一番先生に迷惑をかけたんだから、挨拶してこい」と友人は譲らない。
結局根負けしたぼくは、渋々先生のもとに挨拶に行った。
「先生お久しぶりです」
「ああ、お久しぶりです」
「ぼくのこと憶えてますか?」
「はい、憶えてますよ」
このやりとりで、ぼくは『これは憶えてないな』と思った。だいたい憶えているくらいなら、「はい、憶えてますよ」なんて他人行儀な敬語は使わんでしょう。そんな仲じゃなかったですよね、先生。
あの日は、高校時代に好きだった女子が来なかったことも重なって、ちょっと寂しい同窓会だった。