夢のいたずら

若い頃に描いた夢が、このブログに連れてきてくれました。人生まだまだこれからです。詩とエッセイを中心に書いています。

夢判断

 前にも書いたが、19歳から20歳にかけて、ぼくはよく夢判断をしていたものだ。夢判断とはいっても、この頃はすでにフロイトなどの難しい本は読んでなく、別に深層心理の観察などをやっていたわけではない。
 では、どんな夢判断をやっていたのかというと、それは占いである。つまり、夢占いをやっていたわけだ。
 19歳から20歳というと、ぼくは浪人生活の真っ最中だった。まさに孤独と焦燥の毎日で、いつも何かいいことがないかと思っていたのだが、そのいいことを、夢に求めたわけだ。


 あの頃よく見ていた夢は、海の夢だった。そこで、『夢占い』なる本で海を調べてみると、「恋の成就」などと書いてあった。だいたい、家に引きこもっているような人間が恋の成就などするはずもないのだが、その時は真剣にそうなるものだと思っていた。
 そのためにぼくは、暇があると電話の前に座っていた。好きな子からの電話を待っていたわけである。しかし、かかってくるのはいつも違う女性からだった。


「しんたさんですか?」
「はい」
「今、英会話の教材の紹介をやっているんですけど…」
と言って、その女性はうだうだと教材の説明を始めた。
そして、ようやく話が終わったと思ったところで、彼女はこう切り出した。
「電話ではわかりにくいと思いますから、直接お話したいんですけど」
「えっ?」
「明日、お会いできませんか?」


 人が恋の成就の電話を待っているのに、何が英会話だ。むかついたぼくは、「別に会いたくない」と言って電話を切ったのだった。
 そういう電話はまだいいほうで、ぼくがいない時に高校の同級生を名乗り、こちらから電話させる手口の奴もいた。こんな勧誘の電話ばかりで、どこに恋愛の成就があるのだろう。
 ということで、だんだん夢占いをすることが馬鹿らしくなり、気がついたらやめていたのだった。

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