夢のいたずら

若い頃に描いた夢が、このブログに連れてきてくれました。人生まだまだこれからです。詩とエッセイを中心に書いています。

宿命

 小学生の頃、誰よりも成長の早い子がいたとしよう。成長が早ければ、もちろん下の毛も誰よりも早く生えてくる。それを運悪く同級生に見つかってしまったとする。おそらく、彼のあだ名は『チ○ゲ』で決まりだろう。最悪の場合、女子からも「チ○ゲ君」と呼ばれるだろう。


 小学生の頃のあだ名というのは、なかなか消えるものではない。中学に入ってから、周りのみんなが生え揃える頃になっても、彼は相変わらず『チ○ゲ』と呼ばれている。


 高校に入ってからも、そこに同じ中学校出身の人間がいた場合、その人は彼のことを「こいつのあだ名は『チ○ゲ』やった」と紹介するだろう。そうなると、いくら本人が嫌がっても、『チ○ゲ』の呼び名は変らない。


 彼の至福の時は、おそらくそれから後の数年だろう。さすがに大学や社会では、『チ○ゲ』のあだ名を知る人がいないだろうからである。


 しかし、何年か経つと、必ず同窓会というものが始まる。そこに出席すると、「おう、チ○ゲやないか。元気か?」となるのである。
 忘れていた記憶が蘇る。結局彼は、同窓会のメンバーが全員死ぬまで、『チ○ゲ』と呼ばれることだろう。


 彼は他人より少し成長が早かっただけである。しかし、宿命的に見れば、彼が『チ○ゲ』と呼ばれる宿命を背負って生まれたがために、成長が早まったということになる。


 宿命というのは、いたずら好きなのかもしれない。

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