夢のいたずら

若い頃に描いた夢が、このブログに連れてきてくれました。人生まだまだこれからです。詩とエッセイを中心に書いています。

一人で会話する人

1,
 歩道で信号待ちをしているとき、後ろからブツブツ言う声が聞こえた。振り向いてみると、そこには、実に幸せそうな顔をした兄ちゃんがいた。妙にニコニコしている顔が、何か薄気味悪かった。
 何を言っているんだろうと、聞き耳を立ててみると、どうも誰かと会話しているようだ。


「それでお前はどうしたんだ?」
「・・・」
「ぼくはそうは考えないなあ」
「・・・」
「そうじゃないよ!」


 ぼくは、『何だ、電話をかけているのか』と思ったが、スマホを手に持っているわけではなく、イヤホンもしてない。ということは、電話をしているのではなさそうだ。
 彼は、いったい誰と話していたのだろうか?


2,
 携帯電話が普及するずっと以前のこと、数十分間、ずっと一人で会話している人がいた。
 話の内容は、たわいない世間話から、政治や経済にまで及んでいる。
 話しているかと思えば、突然怒りだし、
「お前がそんなだから、おれは変な目で見られるんだ!」と見えない相手に罵声を浴びせている。
 かと思えば、
「そうやろ。ははは」と仲直りしている。
 きっと本人には会話の相手がいるのだろうが、その相手が見えてない周りの人は、不気味がるばかりだった。
 彼は、いったい誰と話していたのだろうか?

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