夢のいたずら

若い頃に描いた夢が、このブログに連れてきてくれました。人生まだまだこれからです。詩とエッセイを中心に書いています。

白髪ジジイ

 若い頃から心の重しになっていたのが白髪頭で、鏡を見るのも嫌だった。最初の頃こそ切ったり抜いたりしていたが、だんだんそれでは追いつかなくなった。
 そこで健康雑誌を読みあさり、シャンプーを変えてみたり、アロエを頭皮に塗ってみたり、粗塩で髪を洗ってみたり、きなこドリンクを飲んてみたりと、そこに書いてあることをいちいち実践して改善を試みた。
 しかし、ぼくには効果がなく、ヤケになって白髪染めに手を出した。それがいけなかった。染料が合わなかったのだ。それまでは部分的にしかなかったのに、染めていくうちに頭全体に広がって、結局真っ白になってしまった。万事休すだ。


 ところが、そこから気持ちに変化が起こった。いったん真っ白になってしまうと、「もうどうでもいいや」という気分になってきたのだ。それから世界が一変した。あれだけ嫌だった白髪頭が、だんだん誇らしく感じてきた。
 自分の気持ちが変わると、他人の見方も変わってきて、それまで同世代、いや年上の人からも『白髪ジジイ』なんて呼ばれていたのが、二十代や十代の人からも「髪の色、カッコイイっすね」と言われるようになった。それに自信を得たぼくは、今ではこう思うようになっている。
「自分の本当の人生は、頭が真っ白になってから始まったのだ」と。

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