夢のいたずら

若い頃に描いた夢が、このブログに連れてきてくれました。人生まだまだこれからです。詩とエッセイを中心に書いています。

薬害

1,
 最近近所のおじさんが入院したのだが、薬のせいで変な行動を起こすようになったと言っていた。
 病院にいるのに、夜になると決まって家にいるような錯覚に陥るらしい。そのせいか、自分のものも他人のものも自分のものと思うようになってしまい、勝手に他人のカバンを開けたりするのだと言うのだ。


 その持ち主がそこにいなければ、手癖が悪いということになるだろう。しかしこのおじさんの場合、その持ち主の前でやってしまうという。しかも、翌朝になったら、そのことはすっかり忘れているという。


 病院側も、同室の人とトラブルを起こされたら困るので、このおじさんを個室に移した。おじさんは、現在、罪悪感にさいなまれているという。


2,
 以前似たようなことが、うちの親戚内であった。
 当時、その親戚は腰痛で通院していた。


 ある日、夜中に警察から電話がかかってきた。何でも、警察署に親戚から自殺予告の電話があったというのだ。駆けつけてみると、親戚は包丁を首にあて、「死んでやる」などと言って吠えていた。警察も説得を試みたらしいのだが、言うことが支離滅裂で、話にならなかったということだった。


 部屋に入ったぼくは、とりあえず包丁を取り上げ、「明日、話を聞いてやるから、今日は大人しく寝とけ」といい、寝付くまでそこにいた。


 部屋の中を見てみると、テーブルの上に病院からもらった数個の薬の殻が置いてあった。その中には、なぜか精神安定剤が入っていた。どうも、それを飲んでからおかしくなったようだ。
 翌朝、親戚宅に電話をしてみると、「え、そんなことがあったん?」と言う。全く覚えてないのだ。至って冷静で、言うこともはっきりしている。


 数日後、病院に出向き、医者に「もうあの薬を入れないでくれ」と頼んだ。それがよかったのか、それからはそういうことは起こらなくなった。


3,
 ところで、先のおじさんが騒ぎを起こしたのは、うちの親戚が通っていた病院と同じ病院なのだ。おそらく、同じ薬を投与されていたのではないだろうか。


 聞くところによると、そのおじさんは突然倒れて、その病院に運ばれたという。ところが、いろいろ検査したにもかかわらず、その病気が何であるのか、その病院ではわからなかったらしい。


 しかし、倒れた時の状況などを聞いてみると、どうも自律神経失調症のようである。ぼくの知り合いに、何人か自律神経失調症で悩んでいる人がいるが、そういう人たちと症状が似ているのだ。しかも、そういう人たちも、このおじさんと同じように、最初に運ばれた病院では病名がわからなかったという。


 結局、ある人は『てんかん』と言われ、ある人は『貧血』だと言われたらしい。しかし、他の病院で検査をしたら、そういう病気は見あたらなかったそうだ。


 それにしても、病名もわからないのに、薬を与えるとは何事だろう。ぼくが医者や薬を嫌う理由は、こういうところにもある。

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