したたかなインコ
小学校二年生の頃、ぼくの家にはデブという名のメスのインコがいた。親戚からもらった鳥だった。
当初はつがいで飼っていた。二羽は仲がよさそうに見えたのだが、実はそこには愛情なんかなく、体が大きく意地の悪いデブが相方を支配していた。そのうち、デブは餌を独占するようになった。
ある朝起きると鳥かごの底に、冷たく固まった相方の死骸が落ちていた。意地の悪いデブは、鳥かごという小さな世界での生存競争に勝ったわけだ。勝ち誇ったデブは相方の死を屁とも思わなかったのか、涼しげな顔をして歌をうたっていた。
その後一羽になってしまったデブは、さすがに寂しくなったのか、人に媚びを売るようになった。ところがそれはデブの作戦だった。人になついたふりをすることで、鳥かごから出してもらえるようになる。そこで逃げなければ人は油断し、家の中だけではなく外への出入りも自由になる。
ある日デブは計画を実行した。叔母が洗濯物を干している隙にデブは外に出て、そのままピーと言って飛んで行ってしまった。そして、もう二度と帰ってこなかった。
それからおよそ三十年後に、再びインコを飼うようになったのだが、その時も同じような経緯でインコを逃がしてしまった。きっとわが家はペットに縁がないのだろう。