夢のいたずら

若い頃に描いた夢が、このブログに連れてきてくれました。人生まだまだこれからです。詩とエッセイを中心に書いています。

煤けた箱

倉庫で荷受けをやっていた頃、
時々間抜けな簡字体漢字と
不格好な仮名文字が印刷してある、
妙に煤けた段ボール箱が、
何十個も届いていた。
ぼくはこの箱を触るのが嫌だった。
箱もそうだが、
中に入っている商品も、
なぜか薄汚れて見えるのだ。
しかもその箱、虫でもいるのか、
触ったあとにいつもブツブツが出来ていた。
そこでこの箱を検品する時は、
それが夏の暑い時でも
長袖の作業着を着込み、
分厚い軍手をはめて、
直接肌に触れないようにしていたものだ。


中華人民共和国と書かれたその箱は、
那覇港経由で博多に着くと、
コンテナのままトレーラーに積まれ、
うちの店に運ばれてくる。
トレーラーの運転手はいい人で、
よくコーヒーなどを奢ってくれた。
一度「よかったらこれ食べて」と、
小さな紙袋をもらったことがある。
見ると中身は肉まんで、
「これも中国製ですか?」と聞くと、
「そんなわけない」と笑っていた。
おいしかったのを憶えている。

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