夢のいたずら

若い頃に描いた夢が、このブログに連れてきてくれました。人生まだまだこれからです。詩とエッセイを中心に書いています。

真夜中ピーンポーン

『ある真夜中の話』


二月下旬のある真夜中の話だ。
まるで雪女が出てくるような
寂しい風音がして目が覚めた。
枕元に何かがいるように感じ
その気配に怯えたり怖れたり
更に現実の不安まで加わって
なかなか眠ることが出来ない。


眠れないが疲れに変った時だ。
耳元にか細い玄関チャイムの
音が届いた。「ピーンポーン」
ぼくは身動きが取れなかった。



 今のマンションに住み始めて10年ほど経った頃からだったか、真夜中(午前2時か3時頃)に「ピーンポーン」というインターホンのチャイムの音が聞こえるようになった。
 同じ夜中でも12時前後なら、「誰だこんな時間に、非常識な」と怒りを覚えるのだが、時間が時間だ。それはそれは怖くて、一度は寝たふりを決め込んだ。しかし二度三度と鳴るもんだから、放ってはおけない。ぼくは恐る恐る玄関まで行き、そっと覗き窓から外を見てみた。ところが誰もいない。
「おかしいなあ」と、勇気を振り絞り扉を開けてみた。結局誰も見当たらず、ぼくは布団に戻ったのだった。


 それから年に一度二度、真夜中の「ピーンポーン」が鳴るようになった。何年か後の二月のこと、ちょうど上の詩を書いた頃だ。その年初めての『真夜中ピーンポーン』が鳴った。
 その日は風が強い日だった。と、ぼくはその時気がついた。その前に『真夜中ピーンポーン』が鳴ったのは秋で、その日は台風だった。


 もしやと思い、同じマンションに住む方に、
「真夜中にチャイムが鳴りませんでしたか?」
 と聞いてみた。すると、その方は、
「鳴りました。時々なるんで気持ち悪くて」
 と言った。


 それで合点がいった。「ピーンポーン」とチャイムを鳴らすのは風だったのだ。後に調べたら、強風の影響で呼び鈴が反応することがある、ということがわかった。
 一応これで安心したのだが、やはり『真夜中ピーンポーン』は気味が悪い。
 そのせいかどうかはわからないが、マンション全体のインターホンを取り替えることになり、昨年その工事が終わった。
 とりあえずそれ以降、『真夜中ピーンポーン』は鳴ってない。

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