夢のいたずら

若い頃に描いた夢が、このブログに連れてきてくれました。人生まだまだこれからです。詩とエッセイを中心に書いています。

デジャヴか?

 三十年以上前のこと。神奈川県の逗子に行ったことがある。横須賀の叔父が亡くなった時がその時で、荼毘に付すためにそこに行ったのだ。

 逗子、かつて電車で鎌倉に行った時に素通りしたことはあるのだが、降りたことはない。ということで、ぼくにとっては始めて行く町だった。


 さて、荼毘に付した後、宴会が行われたのだが、翌日仕事のぼくは途中でそこを抜け出し、羽田に向かうことになった。ところが、初めての場所なので地理がまったくわからない。そこでそのへんにいる人に聞いてみると、

「まっすぐ行くと広い通りに出る。その通りに沿っていけば京急の駅がある」と言う。


 教えられたとおりに歩いて行くと、広い通りに出た。その時だ。突然家の近くを歩いてる気持ちになったのだ。

『なんだろうこの気持ちは?逗子は初めてだし。もしかしたらこれがデジャヴというものか。であれば叔父の計らいなのかも知れない』

 そんなことを思いながらぼくは駅に向かった。


 しかしおかしい。デジャヴだとしたら何か違う。その気持ちというのは、一度見たことのあるというような気持ちではなく、どちらかというと、そこで現在生活しているような気持ちなのだ。そこでもう一度振り返ってその風景を見てみた。


「あっ・・。なるほどそうなっていたのか」

 一瞬でその理由がわかった。その通りには『釣具のポイント』があり、『ロイヤルホスト』があり、コンビニがあり、スタンドがある。ぼくの家の近くの通りと似たような構図になっていたのだ。そこに同じような車が走り、同じように渋滞し、信号風景もあまり変わらないものだから、そういう気持になったわけだ。


 似たような風景の町はどこにでもあるから、今後もそういう気持になることがあるかもしれない。と思っていたら、十数年後、大分県内を車で走っている時にその経験をした。その時は、ぼくのマンションとそっくりの建物を見つけ、家に帰ったような気持になったものだった。

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