回れ右
夜、仕事を終えて家に帰ってくると、
他階に住む女の子が自動ドアを開け
マンションの中に入ろうとしていた。
ところが女の子は突然回れ右をして
そそくさと外に出ていったのだった。
おかしな子だなと思いながらぼくは
自動ドアを開けて中に入ろうとした。
「あっ!」なるほどそうだったのか
これに気づいたから回れ右したのか。
エレベーターの前を答が歩いていた。
あの女の子はこれがダメだったのだ。
ぼくたちがゴロちゃんと呼んでいる
黒褐色の生物、そうゴキブリである。
実はぼくも気味の悪さを抱いている。
とはいえ回れ右をするほどではない。
さてこの場面、ぼくはゴロちゃんの
運命にどう関わろうかと考えている。
家の外のことだから放っておくかな。
家の中ではないから踏み潰そうかな。
さてどうしよう、回れ右しようかな。